志望動機の締めはどう書く?例文付きで書き方と注意点を解説
就職活動において、志望動機は欠かせません。自分の熱意や意気込みを企業に伝えると同時に、深い企業研究の成果を示すことができれば、好印象を残せます。
しかし、志望動機の最後の「締め」が適切でないと、良い内容を書いていても台無しになってしまいます。
この記事では志望動機の締め方を、書くべき内容や注意点、例文とあわせて解説していきます。こちらを参考に、最後まで魅力的な志望動機を作成しましょう。
志望動機の締めが重要になる理由
締めは印象に残りやすい
心理学には「ピーク・エンドの法則」というものがあります。これは、物語や文章において山場である「ピーク」と結末である「エンド」の2つが印象に残りやすいということを示した法則です。文章の最後にある内容というのは、相手に印象を残しやすい部分です。
そして、これは同時に「過程は印象に残りにくい」ということでもあります。特に、人気企業の採用担当は、それこそ毎日何千枚というESに目を通しています。途中の理由や具体例などはほぼ読むことなく、上下の結論だけを読むということも珍しくありません。強く自分の印象を残すためにも、志望動機の締めは重要です。
締めはアピールする最後のチャンス
志望動機に限らず、文章の最後の結論は、それまでの理由や具体例をまとめる部分です。短くはありますが、もう一度、自分がそう考えた理由などを伝えるチャンスとなります。ここで自分の考え方を明確にアピールすることができれば、採用担当にも興味を持ってもらえる可能性が高まります。
ただし、この締めは同じ文章をくり返せばよいわけではありません。同じ文章の反復は、強い印象を残す効果がありますが、それは詩や小説などの文学的文章に限った話です。志望動機はビジネス文であるため、そのような形は好まれません。冒頭の結論とは異なり、締めの結論までには具体例や理由が示されています。それを踏まえた上で、もう一度、自分の熱意をアピールしましょう。
締めは論理性やコミュニケーション能力が評価される
志望動機に限らず、文章には論理性が求められ、最初から最後まで一貫した内容の文章を書く必要があります。たとえば、冒頭の結論では「社風に惹かれた」と書いているのに、締めの結論では「自分を成長させたい」と異なることを書くと、何を伝えたいのか分からない文章になってしまいます。
論理性は、自分の意見を伝える発信力としてのコミュニケーション能力でもあります。論理性のない文章では、企業側に能力不足を疑われてしまいます。
数多くの文章のなかでも、とりわけビジネス文は、「分かりやすく、簡潔に」が求められます。志望動機もビジネス文であるため、短く筋の通った文章を書くことが必要です。ESを書く時点で、すでにビジネスマンとしての素養が試されていることを意識しましょう。
志望動機の基本構成
志望動機の文章は、相手に言いたいことが明瞭に伝わるPREP法で書くことが一般的とされています。PREP法は、「結論」「理由」「具体例」「結論」の流れで相手に話を伝える方法です。ここからは、それぞれの段階について書き方を説明していきます。
①本文の要約
最初は結論として、本文の要約を書きましょう。最初に志望動機がどのような内容であるかを示しておくことで、続く理由や根拠が理解しやすくなることが期待できます。
ここでは、長々と書くことはせず、端的に内容をまとめた文章にとどめるようにしましょう。導入が長すぎると、かえって読みにくく、印象のはっきりしない志望動機になってしまいます。
②志望した理由
志望理由は、できるだけ具体性を持たせることが重要です。「社風に惹かれた」や「成長できると感じた」といった漠然として理由ではなく、「〇〇という点に惹かれた」といった具体的な内容が好印象のポイントになります。
さらに、その理由を抱いたきっかけやエピソードを付随できると、より説得力のある志望動機に仕上がるでしょう。採用担当者はあなたのことを全く知らない状態で選考をするため、内面をなるべくアピールできるような内容が望ましいです。
③今後の展望
理由のあとには、今後の展望を述べましょう。志望動機に書く理由や具体例の多くは、過去に自分が経験したことです。それだけではなく、入社してからの「未来」で何をしたいのかもあわせて書くことが重要です。
成長が見込めないと判断されれば、選考では大きく不利になってしまいます。今後の展望を明記し、「自分を入社させることはメリットになる」ということを、企業に伝える必要があります。
④締めの言葉
最後は締めの言葉です。「努力します」や「貢献します」などの前向きな意欲を表す言葉や、実際の業務に絡めた内容で文章を締めます。前向きな言葉で言い切ることで、自分に対する自信や思いの強さを示すことができます。
ここでは過度に個性を出す必要はありません。あくまで志望動機がきれいにまとまっているという点が重要です。
ただし、あまりにも定型的な表現ではかえって熱意が伝わりにくくなってしまうので、最低限のオリジナリティを持たせられるとより良い印象を与えられるでしょう。
志望動機の締めの言葉のポイント
アピールするポイントは絞る
志望動機の文字数は、およそ300字前後であることが一般的です。そのため、明確で簡潔な内容が求められます。文章全体に余計な修辞を入れないことは勿論ですが、冗長な表現や文学的表現を削るなど、とにかく実際のビジネスを想定した文章にしなければなりません。
ただ、どれだけ削っても、最後の締めに当てられる字数は絞られてしまいます。そのため、最後の締めでアピールするポイントは、文章全体を通じて「絶対に自分が言いたいこと」のひとつだけに絞りましょう。志望動機のなかでも、最もコアになる「自分が志望する理由」の部分だけを取り上げることで、企業にも自分の熱意が伝わりやすくなります。
企業に貢献できるポイントを入れる
志望動機の締めには、企業や社会に「どのような貢献をするか」を書くようにします。志望動機は、あくまでも就活生が「入社したい」理由です。
熱意を企業もある程度は考慮してくれますが、結局、企業に「入社させる」理由がなければ採用してもらえません。そのためにも、自分を採用することが企業にとって明確なメリットになるということを示しましょう。
示すメリットは何でもかまいません。例えば、知識や資格など、業務を遂行するための能力があることは、単純ですが分かりやすいアピールポイントといえるでしょう。また、どの企業でも汎用的に役立つ「忍耐力」や「コミュニケーション能力」、「行動力」などの自分の力を活かす方法を書くことも効果的です。
質問に合わせた締め方をする
一口に「志望動機」と言っても、その質問の形は様々です。直接的に「志望動機を教えてください」と尋ねられることもあれば、それに加えて「貢献できることは」や「将来のキャリアビジョン」など、何か別の質問が付加されて尋ねられる場合も珍しくありません。結びの言葉は、この質問の内容に合わせて変更しましょう。
特に、付加された質問があるときは要注意です。たとえば「将来のキャリアビジョン」についての質問があれば、締めは「将来的に〇〇していきます」などにしなければなりません。質問に対して適切な回答ができていないと、「話を聞かない」「コミュニケーション能力に問題がある」などの評価をされてしまいます。
志望動機を締める文章の例文
例文1:企業や企業の商品について書いた場合
私が、貴社を志望した理由は、貴社が私の大好きな〇〇の販売元だからです。〇〇への愛情ならば誰にも負けません。貴社に入社後は、その〇〇の開発に携わりたいと考えています。
小さい頃に買った〇〇は、私の世界を大きく広げてくれました。〇〇を通して世代を越えた多くの友人ができただけではなく、何度か国際大会に出場するなかで、外国語も話せるようになりました。今でも、毎年発売される新しい〇〇を購入し続けています。
私は今後も〇〇が発展していくことを信じています。これまで〇〇を通して得た経験に、大学時代にアルバイトしていた広告会社で培ったイラストレーターとしての技術を加え、〇〇の開発に携わりたいと考えています。(300字以内)
この志望動機の中核になるのは、商品への愛情です。どんな些細なきっかけでも、「その企業の〇〇が好き」というのは、特定の企業でなければならない理由となります。その商品を通じて、自分がどう変わったのか、どんな経験をしたのかを具体例や理由に盛り込むことで、より「貴社でなければ」という印象を与えられます。
それを受けて締めの部分には、商品への愛情を示すと同時に、それに対して、自分が何ができるのかを書いています。単に「好き」というだけでは、企業としても採用に踏み切れません。
この例文であれば「イラストを描く」という技術で貢献しようとしています。このように、自分のスキルや経験を併せて書くと、企業も「どのように働きたいのか」がイメージしやすくなります。
例文2:企業理念について書いた場合
私は、貴社の掲げる「試行錯誤こそ高い技術力につながる」という企業理念に共感し、貴社を志望いたしました。私は、子どもの頃から何かを作ることに熱中していました。現在では、ロボット作りに熱中しており、大学では電子工学について勉強を続けています。
ロボット作りは上手く行かないことがほとんどです。プログラミングや、歯車や配線の違いで想像した挙動になりません。完成しても改善点を見つけ出し、より良いものにしていくことは大変ですが、同時にやりがいも感じています。
貴社は、国内におけるロボット開発のトップ企業です。私も試行錯誤が行われている貴社のロボットの開発に携わり、将来は人型のロボットを開発したいと考えています。(350字以内)
最後の締めは長く書くことよりも、志望動機として最も自分が伝えたいことを意識します。そうすると、締めに書くべきポイントも自然と絞られます。
この志望動機の締めで重要な点は、「企業理念」についてです。企業理念というのは、企業を選ぶときのひとつのポイントです。同じ業務、同じ業界であっても企業ごとに考えていること、目標は異なります。これがマッチしているかどうかは、働き始めた後にも強く影響するため、無視できません。この志望動機では、自分のこれまでの経験が企業の掲げる理念と合致していることを示しています。
企業理念を作る目的は「社員の目標共有」「自社の社会に対するアピール」の2つです。理念への共感は「どんな企業であるか」を分かっていることを示します。また、目標が共有できているため、長く働いてくれることを企業側も期待できるでしょう。
例文3:自分の目標について書いた場合
私は小さいころから「世界を舞台に仕事がしたい」と考えていました。また、大学で海外貿易について研究する中で、「貿易に携わる仕事をする」という具体的な目標ができました。
私は海外の通販サイトでモノを購入する機会が多く、日頃から海外と日本を仲立ちしてくれる貿易企業の存在を強く感じています。特に、日本の貿易会社の代表である貴社は世界各地に支社を持ち、様々な品物を輸入し、現地の経済発展にも寄与されています。そのような社会貢献への姿勢にも、強く共感し貴社を志望しました。
貴社に入社後は、大学で学んだ貿易の知識や、マルチリンガルとしての能力を存分に発揮して、世界中を飛び回り貴社の更なる発展に貢献します。(300字以内)
この志望動機の中核になるのは「自分の目標」です。志望動機において、重要なことは「その企業でなければならない理由」です。この志望動機では、「自分の目標を達成できる企業は貴社だけである」という明確な理由があります。
「働く」という行為の目的は、決して給料を得るためだけではありません。例えば、自分の技能や経験を深めたり、人脈を広げることも目的に数えられるでしょう。また、上記の志望動機のように、自分の目標を達成することも目的として考えられます。自分の目標を具体的にできるほど、企業側も働く姿をイメージしやすくなります。
ただし、目標を中核に置くと、当然、企業側からは「それが達成できたら、どうするのか」という疑問が生じます。これに対して、必ず「次はこうする」という達成した次の目標を志望動機には書きましょう。こうすることで、自分の課題発見能力や、問題解決能力があることを暗に示すことができます。目標や課題を自分で見つけ、それに向かって行動できることも、社会人にとっては重要な能力です。
例文4:自分の強みについて書いた場合
私は、就職にあたって、趣味で続けているWebデザインを仕事にしたいと考え、貴社のWebデザイナーを志望しました。
私は、中学時代からホームページを作っており、大学時代には、サークルで入会者を増やすためのホームページ作りを任されました。その時から、アクセス数を増やすための方法や、デザインなどを考えるようになりました。結果として、ページを見た人の入会が大幅に増加しました。この経験から、私はWebデザインで企業や商品の価値を、広く発信できるWebデザイナーを目指しています。
貴社は挑戦的な社風であり、新人にも機会がある企業です。貴社で自分の技術を磨き、多くの商品を世界に発信していくことが目標です。(300字以内)
自分の強みを志望動機の中心に据える場合、その強みは英語などの言語や大学における学術的な知識のほか、絵や歌などの技術をアピールすると効果的です。新卒採用は、これからの成長への期待を込めた採用です。
しかし、既に技術がある就活生がいれば、それを採用しない理由はありません。今後も成長していくことを自信を持って伝えられれば、それだけでも採用に近づくでしょう。自分のしたいことが実現できる社風であることも、プラスの要素です。
企業が人を採用する目的は、一種の投資とも捉えられます。その人が学び、将来的に企業や社会に貢献してくれることを期待して、採用し給料を払っています。自分の強みをアピールするときは、自分の能力が企業にとって有効であることを示しましょう。
例文5:自分の経験について書いた場合
私は貴社での仕事を通じて、この街の人たちの役に立ちたいと考えています。私は小さいころから買物は貴社の店舗でしていました。また、大学時代には貴社でのアルバイトを始め、お客様から頂く感謝の言葉を受けたことで、卒業後は貴社への就職を志望するようになりました。
貴社はメインとなる業務以外にも、地元の大会の協賛や地域の清掃活動など、地域貢献の活動が活発です。私も何度か参加させて頂きましたが、密接な地域との関わり合いが長く愛される要因であると思っています。
大学時代の貴社でのアルバイトの経験を活かし、私もお客様に愛される貴社の一員になり、地域に貢献できるように努めます。(300字以内)
大学時代にアルバイトをしたことがない人は、そういないはずです。この志望動機では大学時代の「自分の経験」を話の核に置いています。既に志望する先でアルバイトの経験があることは、その企業を志望する立派な動機となります。同時に、その経験が、そのまま自分の「貴社を知っている」というアピールポイントにもなります。
アルバイト以外には、一般的なインターンシップや、海外での留学も同時に経験できるワーキングホリデーなども企業と就活生を結びつけるポイントです。自分の「働いた」経験を志望動機を書く上で、有効な武器になります。それ以外にも、サークルや学業など、大学時代の経験を活かしてみましょう。
志望動機を締める文章の注意点
志望動機の締めは、文章全体を支える重要な部分です。冒頭と結論で内容が矛盾していないことは当然ですが、今後に控える面接において、どの点が深堀りされる対象になるかも重要なポイントです。
面接における質問も想定しながら、志望動機の締めに取り掛かりましょう。
定型文にオリジナリティを持たせる
志望動機の締めの文章は、どうしても「努力します」や「努めます」など、自分の前向きさをアピールする定型文になってしまいます。締めは最後の挨拶にあたる部分なので、定型文になるのは避けられません。
しかし、単に「頑張ります」とだけ書く就活生と「〇〇において力を発揮できるよう頑張ります」と具体的なことを書く就活生、どちらを面接したいかと尋ねられたら、間違いなく後者でしょう。
たとえ、定型文でも「自分だからこそ」の要素を付け加えれば、それだけでも魅力のある文章になります。企業としても具体性のある話があれば、働き始めた後のイメージも考えやすくなるでしょう。「何で」「どうやって」という対象や方法論を明確にすると、企業研究の深さも伝わり、一石二鳥です。
根拠のない展望は評価されない
締めで伝える展望で書くべき将来には、根拠を意識しましょう。「営業でトップになる」や「〇〇の責任者になる」という内容の志望動機をよく見かけます。自分のやる気をアピールしたい気持ちは分かりますが、地に足がついていない将来の展望を書いたとしても、企業は評価してくれません。
そもそも、入社前の時点では、トップになる方法も責任者になる方法も就活生が知る術はありません。やる気があっても、目標に向かっていけるだけの実力や方法論が確立されていなければ、単に夢物語で終わってしまいます。根拠のない展望を語ることは、「現実が見えていない」「世間知らず」という、社会人として非常に厳しいマイナス評価を受けることにつながります。
志望動機で書く将来の展望は、せいぜい1年から2年程度の短いものです。働き始めてから1年程度で成し遂げられる内容、もしくは今後働いていく上での方針程度に留めておく方が無難でしょう。無理に自分をよく見せようとしてはいけません。
謙遜も誇張もよい印象はない
締めの文章では、謙遜した表現は厳禁です。志望動機はやる気の高さをアピールするためのものです。そのなかで謙遜した表現をすると、採用担当に「受け身である」という印象を持たれてしまいます。
どんな仕事でも積極的に自分から行動することが重要です。そこで、受け身であるという印象を持たれてしまうと、それだけでマイナス評価になります。志望動機は謙遜せずに、自信を持って言い切るようにしましょう。
また、同時に誇張した表現も避けます。根拠のない展望もそうですが、たとえば「絶対」や「必ず」というような強すぎる表現、「すべて」や「全部」というような例外のない表現は、つい使ってしまいがちなので注意しましょう。
これらの表現を用いると、採用担当は就活生に強いプライドを感じてしまいます。プライドがあることは立派ですが、それが過ぎると業務に悪影響を及ぼしてしまうので注意しましょう。
志望動機は締めまで入念にチェックを
採用選考が進み、最終選考に近づくにつれて、残る就活生の能力は同じ程度になっていきます。そのなかで少しでも有利になりたいのであれば、志望動機の作成に手は抜けません。
特に、締めの部分は、自分の思いをもう一度伝える重要な部分です。また、文章全体としても論理性を確かめる要素にもなります。
締めくくりまで丁寧に伝えることができれば、志望度の高さや入社後の展望など、企業が知りたいことを伝えやすくなります。志望動機の内容全てを受ける締めの部分こそ、最も注意すべき部分といえるでしょう。
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