【例文10選】広告業界の志望動機の書き方|選考を突破するコツ

広告業界は就活生から絶大な人気を誇ります。志望者が多く、難易度が高い会社も少なくありません。

内定を得るには、しっかりと自分の強みをアピールする必要があります。特に志望動機は差別化が必須です。

記述のポイントは、綿密に業界研究企業研究を行うことです。広告業界は学生の憧れを集めやすい反面、ビジネスモデルはあまり知られていません。業界研究で詳細を知り、「具体的にどのような仕事がしたいか」を明確にしましょう。

さらに企業研究で、あなたのビジョンに最適な会社を見つけ出します。ビジョンが適合する会社なら、熱意が伝わりやすく、内定を得やすくなります。

この記事では効果的な志望動機を作成するために、広告業界を深堀りします。広告業界の概要から志望動機の書き方、コツ、職種別の例文まで、徹底して解説しています。ぜひ参考にしてみてください。

高倍率で厳しい?広告業界の実態

高年収の企業が多く華やかなイメージがある

広告業界は華やかで、年収も高いイメージがあります。しかしすべての会社がイメージどおりに運営されているわけではありません。就活に臨む場合、業界研究・企業研究で実態を見極める必要があります。

広告代理店は、緻密なマーケティングにより、時代を先取りした独創的な広告をつくり出します。「新たな流行を仕掛ける」と考えれば、時代をリードする仕事です。外部から見れば華やかに映るかもしれません。

しかし実際の職場環境は社風次第だと言えます。全ての会社が華やかな雰囲気で仕事をしているわけではないのです。

年収も同様で、イメージの域を脱しません。国税庁の「民間給与実態統計調査(令和4年分)」(※参照1)によると、広告業界が属する「学術研究,専門技術サービス業」の平均給与額は564万円です。全職種平均の465万円よりは高いものの、突き抜けた額を期待できるわけではありません。実際に「金融・保険業」や「情報通信業」など、より高い平均額を示す業種もあります。

高年収のイメージは、電通や博報堂など巨大企業のイメージが強いためです。両社の平均年収は1,000万円を超えると言われ、入社すれば高年収を期待できるでしょう。

広告業界は大手企業ばかりではありません。業界全体を単一のイメージで見ず、自分が広告業界の中でもどんな分野で活躍したいのか、企業の特徴や強みをしっかり調べましょう。

実態は意外と知られておらず業界研究が必須

広告業界はイメージが先行する反面、実際の業務内容は意外と知られていません。企業を相手にするビジネスモデルのため、学生には縁遠い世界だからです。明確な目標を立てるためには、業界研究が必須です。

業界研究では、ビジネスモデルの把握から始めます。事業の全体像を掴むことで、各職種の役割も理解できるでしょう。

研究を重ねるうちに、徐々に夢を具体化できます。「CMの企画を出すプランナー」「キャッチコピーをつくるコピーライター」など、特定の職種を目標に据えられるようになるでしょう。

高倍率のため企業研究・自己分析で差別化を

広告業界は高倍率のため、志望動機の差別化が必須です。志願者に埋もれる志望動機では、企業は歯牙にも掛けません。

マイナビが2024年卒の大学生向けに実施した「業界イメージ調査」(※参照2)によると、「広告・芸能業界」は「就職先として検討したことのある業界」の第5位(全40業界中)に選ばれています。文系の女子学生に絞れば「官公庁・公社」を凌ぐ第1位で、30%以上が検討対象に挙げる人気ぶりです。実績があり業績も好調な会社は、相当な志願倍率が予想されます。

差別化を図るには、志望動機に具体性を持たせ、説得力のある内容にしなければなりません。ポイントは企業研究と自己分析です。

企業研究では、当該企業を選ぶ強い理由を示します。具体的であるほど熱意が伝わり、採用担当者の心を動かせるでしょう。

自己分析では、キャリアパスをつくることと、強みを見つけ出すことに集中しましょう。企業での目標を明確に掲げ、あなたの強みを押し出せば、志望動機は自ずと説得力のあるものになります。

取引先との関係で理解する広告業界のビジネスモデル

広告代理店と取引先との関係性

広告業界には、制作から掲載までの一連の流れを請け負う「広告代理店」と、制作のみを請け負う「広告制作会社」があります。後者は経験とスキルを問われることが多く、新卒採用を積極的に行いません。新卒では一般的に広告代理店に就職します。

広告代理店のビジネスモデルは、取引先との関係性で捉えると分かりやすいでしょう。

メディア企業とは、広告を掲載する新聞やテレビ、ラジオ、雑誌、Webサイトなどの広告枠を持つ企業を指します。自社が取り扱う広告枠を広告代理店や企業に販売し利益を得ています。

広告代理店は広告主の多様なニーズに応えるため、さまざまなメディア企業とつながりを持ち、広告枠を用意します。

同時に広告主となる顧客の話に耳を傾け、最適な出稿媒体・広告枠を提案します。媒体に応じたPRができるよう、慎重なマーケティングも欠かせません。マーケティングに基づき立案し、顧客の合意を得て広告や販促物、イベントで使用するものなどを制作します。制作は自社のクリエイターが引き受けるだけでなく、下請けの制作会社やに依頼する場合もあります。

広告代理店の収益は、顧客から支払われる発注費用です。発注費用全体からメディア企業に支払う広告費や制作会社への手数料などを差し引いたものが利益となります。

安定した利益を得るには、顧客の満足度が重要です。クリエイターの能力はもちろん、優れたマーケティング技術や、正確なヒアリングなど、社員一人ひとりの力が問われます。

志望先の絞り込み必須!広告業界の種類

会社選びの前提として理解したいのが、広告業界の種類です。広告業界は「総合広告代理店」「専門広告代理店」「ハウスエージェンシー」に大別されます。あなたのビジョンの達成に、どの形態が適切かを見極めましょう。

さまざまな媒体を手がける「総合広告代理店」

総合広告代理店は、広告枠を仕入れるメディアを限定せず、あらゆる広告を請け負う企業です。幅広い制作物をつくれる企業力が必要で、大手が多い傾向にあります。

広告を出稿する顧客にとっては、一度に複数の媒体を利用できるメリットがあります。消費者の目に留まりやすく、高い効果が期待できるでしょう。

さまざまな媒体の広告に携わりたい人や、規模の大きな仕事を経験したい人、大企業との取り引きを学びたい人に向いています。

一方で、特定の職種にこだわる場合は注意が必要です。大手総合広告代理店では「総合職」で採用されることが多く、就職後に配属先が決定されます。必ずしも希望が通るわけではありません。

子会社や関連会社を複数有し、制作を任せているケースもあります。クリエイター志望の場合、出向を命じられる可能性があることも肝に銘じておきましょう。

<代表的な企業>

電通

博報堂/博報堂DYメディアパートナーズ

ADKホールディングス

特定媒体・分野が得意な「専門広告代理店」

専門広告代理店は、特定の媒体に特化した企業です。得意分野を活かし、専門性の高い広告を制作します。ローカルメディアへの出稿に専門的に対応する企業など、特定地域で活躍する事例も多く見られます。出稿媒体が限定される分、メディア企業と良好な関係を築きやすいのが特徴です。

顧客目線で見れば、安価で専門性の高い広告を依頼できるメリットがあります。「高齢者向けにテレビ広告だけ流したい」「YouTube向けの動画広告をつくりたい」など範囲を限定する場合に便利です。

特定の媒体での専門性を高めたい人や、職種を限定して頑張りたい人、地域に根ざした事業に従事したい人におすすめです。

<代表的な企業>

サイバーエージェント(Web)

ジェイアンドユー(紙媒体)

ライドアウト(雑誌)

親会社の仕事を請け負う「ハウスエージェンシー」

ハウスエージェンシーは大手企業が設けた広告専門の子会社です。大手メーカー、新聞社、鉄道会社、通販会社などが設立した事例が多く見られます。

一般的には親会社からの依頼を専属で引き受け、「広告・宣伝部門」のような役割を果たします。経営は安定する傾向が強いものの、親会社の業績に引きずられるのが難点です。

親会社が広告枠を持つ場合、メディア企業から仕入れる必要がありません。たとえば鉄道会社のハウスエージェンシーは、駅の看板広告や電車の車内広告を自由に使えます。利益を上げやすいビジネスモデルだと言えるでしょう。

大企業の関連会社で働きたい人や、親会社のファン(〇〇電鉄が好き、〇〇自動車の広告をつくりたい等)、特定業界に特化したクリエイターを目指したい人におすすめです。親会社の広告なら媒体を問わず請け負うため、幅広いスキルを身に着けるにも良いでしょう。

<代表的な企業>

ジェイアール東日本企画(親会社:鉄道)

トヨタ・コニック・プロ(親会社:自動車メーカー)

インターワールド(親会社:テレビ通販)

広告業界の代表的職種と具体的な業務内容

広告業界の代表的な職種
  • 営業
  • マーケティング
  • クリエイティブ
  • 事務

ニーズを聞き出し広告の提案を行う「営業職」 

顧客に広告の提案を行うのが営業の仕事です。制作を受注するだけでなく、顧客の要望を細かく聞き取り、適切な提案をします。営業が正しくヒアリングしない限り、マーケティングが進まず効果的な広告案を出せません。広告制作は、営業から始まると言っても過言ではないのです。

営業の仕事は、受注して終わりではありません。顧客と広告の効果を共有し、制作陣にフィードバックします。広告業界は結果が全てのシビアな世界です。だからこそ、結果を冷静に分析し、より良い広告をつくる姿勢が大切です。顧客に継続的に寄り添うことは、長期的な取引関係の構築にもつながります。

さらに広告業界ならではの特徴と言えるのが、コンペの対応です。広告案を比較検討し、最良の会社に制作を依頼するため、広告主が開催することがあります。受注を目指す場合、他社に勝てる広告案を提示しなければなりません。高度なプレゼン能力と、自社の魅力を分かりやすく伝える資料作りが求められます。

市場調査をもとに広告を立案する「マーケティング職」

営業がヒアリングした内容を受け止め、市場調査を行うのがマーケティング職です。効果的な広告をつくるには、市場のニーズを正確に把握しなければなりません。市場調査に基づき、ターゲットに確実に届く広告案を立案します。

マーケティングの結果は広告の方向性を左右します。デザインやキャッチコピーも、マーケティングの決定に柔軟に対応しなければなりません。マーケッターは、広告制作の舵取り役でもあるのです。

広告を熟知し、分析結果から「良い広告案」を導き出せる経験豊かな人材がふさわしいでしょう。新卒の場合、先輩社員からノウハウをきっちり学ぶ必要があります。

人を惹き付ける広告をつくる「クリエイティブ職」

マーケティングの結果をもとに、実際に制作にあたるのがクリエイティブ職です。役割を分担しながら制作を進めます。いずれの職種もスキルと経験を問われるため、新卒で活躍するのは難しいかもしれません。少しずつ経験を積み、一人前のクリエイターを目指します。

主な職種は次のとおりです。

クリエイティブディレクター

全体の進行を統括する役職です。具体的な制作案を決定し、職員の配置から進行管理、制作中の顧客とのやりとり、納品までを責任を持って行います。制作現場の総監督のような仕事です。十分な制作経験を持つ人が適任です。

アートディレクター、映像ディレクター

制作する広告の種類により、配置されるディレクターは異なります。アートディレクターは、紙媒体やWeb広告の画像など、グラフィックに関わる全般を指揮する役割を担います。映像ディレクターは、動画広告における映像全般の指揮が仕事です。

両者とも決定した制作方針とズレがないか監督しながら、クリエイターに指示を出します。さまざまな作品をつくり上げた経験はもちろん、制作全体を俯瞰できる能力が必要です。

デザイナー

デザイン業務の担当者です。アートディレクターの指示に従い腕を振るいます。独創性があれば良いわけではなく、「いかにターゲットに訴求するか」「商品の魅力を伝えるか」が大切です。指示を的確に形にする力が求められます。

コピーライター

広告のコピーをつくる役職です。顧客の要望を最大限に汲み取り、商品の魅力を端的に言い表す短文を考案します。記憶に残る名文も、一目で惹き付けるキャッチーなワードも、コピーライターの腕にかかっています。

大切なのは顧客のニーズと広告の方向性を的確に捉えることです。豊かな発想力と、卓越した言語感覚も求められます。

CMプランナー

テレビコマーシャルの企画・演出の担当者です。顧客の要望やマーケティングの結果に基づき、どのようなCMが効果的か判断し、提案します。ストーリーをつくるのも、起用するタレントを挙げるのもCMプランナーの役割です。

アイデアを形にする発想力と、顧客への高いプレゼンテーション能力が求められます。

事業の進行を支える「事務職」

広告業界にも事務職が存在します。経理、総務、人事など他業界と役割は変わりません。ただし会社によっては制作物のチェックやスケジュール管理、企画書づくりなどに関わることもあります。

気をつけたいのはスケジュール管理です。広告には納期があります。納期を守らないと、会社の信用に影響します。クリエイティブディレクターと進捗を共有しながら、管理を慎重に行わなければなりません。

また案件によっては、経理処理に最大限気を配る必要があるでしょう。イベントのプロモーション全般を手がけるような場合には、億単位のお金が動くことも珍しくありません。他業界以上に厳格さが求められます。

広告業界に向いている人は?求められる人物像

話を聞き出す能力に長けている人(営業職)

営業職に求められるのが、話を聞き出す能力です。聞き役として、相手の要望を正確に捉えられる人が向いています。

広告の制作は、顧客のニーズを正確に見極めることからスタートします。ニーズに基づき市場分析を行い、市場分析の結果に基づき制作を行います。営業のヒアリングがなければ何も始まりません。

普段から相手の話に耳を傾け、言いたいことをまとめる能力を培っておくと良いでしょう。とりとめのない話をまとめるには、頭の中で筋道を立てなければなりません。論理的に物事を捉える習慣もつけておきましょう。

鋭い分析力を持ち論理的に考えられる人(マーケティング職)

マーケティング職に求められるのは、鋭い分析力論理的に物事を考える力です。分析だけでなく、広告効果を最大限に高める筋道を立て、顧客とクリエイターに提示します。「何をどうするか」を分かりやすく示すことで、説得力のある広告案を作成できます。

マーケティング職を目指す人は、日頃から分析に慣れておくと良いでしょう。自分でできる練習方法としては、Googleのサーチコンソールアナリティクスが便利です。簡単なホームページを作成し、サービスに申し込めば、誰でも無料で利用できます。分析結果をもとに、どうすればアクセスが伸びるかを考え、改善策を実行しましょう。マーケティング職に求められる仕事の流れを大まかに体感できます。

昨今はWebが中心の専門広告代理店が増えています。Webの解析経験は、業務に直接的なメリットをもたらす強みになります。

柔軟な発想力で物事を捉えられる人(クリエイティブ職)

クリエイティブ職に求められるのは、柔軟な発想力です。広告の良し悪しは、最終的にはクリエイターの制作手腕にかかっています。視聴者をあっと驚かせるCMや、一瞬で目を引くキャッチコピー、記憶に残り続ける演出など、良い広告には柔軟な発想力がつきものです。一を聞いて十の案を出せる人が歓迎されます。

柔軟な発想力を培うには、普段からさまざまな世界に触れる癖をつけると良いでしょう。一つの視座に凝り固まると、柔軟な発想は生まれません。さまざまな観点から制作にあたれるよう、興味の幅を広げましょう。

専門的なIT技術に長けた人(クリエイティブ職)

Web広告が増えている現状を鑑みると、クリエイティブ職にはIT技術に長けた人が求められるでしょう。

昨今は、ユーザーの動きに反応して動くバナーや、アニメーションを使用した広告など、Webの特性を利用した「リッチメディア広告」が増えています。Web広告の進化は日進月歩で、今後もより複雑な技術が取り入れられるかもしれません。

どの広告代理店も、変化に対応できる専門的な技術に長けた人材を欲しがるでしょう。IT業界と同等の専門性を求められるかもしれません。

情報収集が得意で世の中の動きに敏感な人(全職種)

広告業界では、職種を問わず情報収集が得意で、世の中の動きに敏感な人が求められます。大衆に広く訴求する広告をつくるには、世の中の動きを無視できません。社会の変動を見越して、一歩先を見据える姿勢が大切です。

クリエイティブ職はもちろん、広告を提案する営業職や、広告効果を測定するマーケティング職にも、時代の流れを読み取る力が等しく求められます。

時流に敏感になるには、社会を俯瞰する癖をつけると良いでしょう。過去から現在に至る社会情勢、政治、世相などの流れを観察します。原因になる出来事があり、後に結果がもたらされていることが分かります。

世の中の流れは原因と結果の連続です。現状をつぶさに観察すれば、未来の社会を変えるトリガーが見つかるかもしれません。

広告業界への就職に有利な資格やスキル

マーケティング職はWebの認定資格にチャレンジ

マーケティング職を志望する人は、Webマーケティングに役立つ資格を取得すると良いでしょう。Webアナリスト検定や、GoogleAnalytics個人認定資格、Google広告認定資格などがあります。

Webアナリスト検定は、日本Web協会が主催するGoogleアナリティクスの資格試験です。5時間程のオンライン講座を受け、アナリティクスの使い方をきっちり身につけた上で受験します。知識に自信がある人は、検定試験だけを受けることも可能です。

Google社が直々に行っている認定資格もあります。GoogleAnalytics個人認定資格(GAIQ)です。初級者向け・上級者向けの準備講座を受講した後、Googleアカウントをスキルショップに登録すれば試験を受けられます。講座、試験共に無料です。

同社はGoogle広告認定資格も実施しています。こちらは広告に関する専門知識を問う試験です。検索広告、ディスプレイ広告、動画広告などジャンルが細分化され、得意分野の試験が受けられます。アナリティクス同様、スキルショップに登録すれば受験できます。

これらの資格を取得しておけば、専門性をアピールする大きな武器になるでしょう。

クリエイティブ職はAdobeのソフトに慣れておこう

クリエイティブ職にはスキルが問われます。独学で少しでも身に付ければ、大きなアピールになります。

グラフィックデザインを手がけるには、Adobeのillustratorphotoshopが必須です。月額3,000円(/1本)前後で使用できます。プロ仕様のソフトではあるものの、操作は直感的で難しくありません。良い参考書も多数出版されています。本を片手に、チラシやパンフレットなどを制作してみましょう。

動画では、同社のPremier ProAfter Effectsをおすすめします。手持ちの機材で動画を撮影し、Premier Proで簡単な編集をしてみましょう。慣れてきたら、After Effectsで高度なエフェクトにも挑戦します。でき上がった動画に自信があれば、動画共有サイトで公開するのも、スキルアップに役立つかもしれません。

プロのクリエイターから見ると、素人の独学は未熟に映ります。しかし制作の下地づくりは良いアピールになることも事実です。伸びしろを感じやすく、クリエイターとしての心構えもでき上がります。自分が真につくりたいものを見極めるきっかけにもなるでしょう。

志望先を考える前に知りたい広告業界の展望

Web広告は加速を続ける

現在広告の中心になっているのはインターネット上のWeb広告です。電通が公開する「日本の広告費2023」(※参照3)を参照すると、「インターネット広告費」は広告費全体の45.5%を占めています。「地上波テレビ」は22.0%、テレビとラジオ、雑誌、新聞を合わせた「マスコミ四媒体広告費」が31.7%であることを鑑みると、いかにWeb広告の需要が高いか理解できるでしょう。

この傾向は年々高まっており、調査結果が示されている2010年以降、Web広告は毎年堅調な伸び率を示しています。2021年はコロナ禍で自宅で過ごす人が増えたこともあり、前年比121.4%の圧倒的な伸び率となりました。

これまでの堅調な推移を見ると、簡単にマイナスに転じるとは考えづらく、今後も加速を続けると予想されます。今以上に多くの広告代理店が、Webに事業の軸を移すようになるでしょう。

参照:日本の広告費2023|電通

Web広告の中でも動画を使用した広告が全盛

Web広告には、検索結果に連動して表示される広告や、バナータイプの広告などさまざまな種類があります。現在最も高い伸び率を示しているのが、ビデオ(動画)広告です。

電通による「2023年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」(※参照4)によると、2023年には前年比115.9%の伸び率で、Web広告全体の25.5%を占めています。同社はインターネットに接続したテレビが普及したことにより、テレビメディア関連の動画広告が増えたこと、Webサイト上の静止画バナー広告が動画形式にシフトしていることの2点を要因に挙げています。

動画制作能力に長けたクリエイターのニーズが増えることが予測されます。

参照:「2023年インターネット広告媒体費」解説|電通報

広告のパーソナライズがビジネスモデルを変える可能性も

Web広告の大きな特色として、広告のパーソナライズ(パーソナライズド広告)が挙げられます。これは個人の検索履歴や訪問サイト、居住地域、性別や年齢などに応じて最適な広告を表示させるシステムです。

必要な人に必要な情報が直に届くため、広告主にとっては画期的だと言えます。広告効果が大きいことから、今後利用が拡大していくでしょう。

パーソナライズド広告は、以下のプラットフォームで利用できます。

  • Google
  • Yahoo!
  • Amazon
  • X(旧Twitter)
  • LINE
  • TikTok
  • Facebook
  • Instagram など

多くの人が日常的に利用するサイトが多く、認知が拡大するほどに利用者も増えることが予想されます。文字ベースであれば個人運用も可能で、広告代理店を通さない利用も増えるでしょう。

広告代理店は、コンバージョンにつなげる技術的支援を強化するなど、ビジネスモデルの変革を迫られるかもしれません。求められるスキルの変化に、社員も対応する必要があります。

海外市場で新たなビジネスモデルが拡大する

大手総合広告代理店は、日本国内にとどまらず、海外展開も活発です。電通はM&Aを基盤に海外進出を続けており、今や売上構成の6割が海外です。アメリカやヨーロッパ、アジア太平洋地域にネットワークを広げ、「世界の広告会社」(※参照5)として活躍しています。

背景にあるのはデジタル分野の拡大です。海外のWebメディアやデータマーケティング会社を買収することで、国や地域に適したWeb広告を展開しやすくなります。また同社が掲げる「カスタマートランスフォーメーション&テクノロジー」(※参照6)を強力に推進できます。

これは企業が顧客・潜在顧客のパーソナリティに寄り添った事業を展開できるよう、事業基盤を提供するビジネスモデルです。顧客データの維持管理、ユーザーに最適なサービスを提供する仕組みづくり、そのためのプラットフォーム構築などが含まれます。

海外を視野に世界的な広告展開を考えたとき、電通のように現地法人を買収する動きが活発になるかもしれません。

参照:電通グループ統合レポート 2022|電通グループ

About us|電通

紙媒体広告ならではの長所を活かす

Web媒体が活発になる一方、苦戦を強いられているのが紙媒体です。「日本の広告費2023」(※参照3)によると、広告費全体に占める新聞の割合は4.8%、雑誌は1.6%です。新聞は前年比-5.0%で規模が縮小しています。雑誌は2.0%の増加が見られるものの、紙の出版物販売金額が前年比94.0%と減少しています。広告効果は高くないでしょう。

出版社はデジタル事業やコンテンツ事業に軸足を移しており、広告主からすると出稿のメリットを見出しにくいのが現状です。

しかし少ないながらも需要があるのは事実です。特に雑誌は該当ジャンルのコアなファンに訴求しやすい長所があります。広告代理店には、ファン心理に訴えかける広告の作成や、インターネットやSNSと連動した広告展開など、誌面広告の価値を高めていく努力が求められます。

志望動機を作る前に必ず行う3つのこと

広告業界を選ぶ理由を明確にする

効果的な志望動機をつくるために最初に行うのが業界研究です。広告業界の現状と展望を知り、「現在の課題を解決するために何が必要か」「展望の実現にどのような働きを求められるか」を考察します。求められる人物像が理解できるでしょう。

業界全体の方向性が分かったら、あなた自身の夢と照らし合わせて考えます。思い描く夢を、広告業界で実現できるか冷静に判断しましょう。華やかな仕事で憧れを持ちやすい業界だけに、想像と現実が乖離している可能性があります。

求められる人物像に近づく努力ができるかも、自身の適性や性格から判断しましょう。努力ができるなら、就職までにスキルや能力を可能な限り高めると良いでしょう。

業界研究に役立つのは、業界誌や大手企業が発行する業界レポートです。業界全体を俯瞰する内容の記事を見つけ、研究を進めてください。

広告業界の中で当該企業でしか実現できないことを知る

業界研究の次に企業研究を行います。業界全体を一つのイメージで捉えるのは危険です。企業ごとに異なる特色があります。社会で活躍する企業は、「自社でしか実現できない特色」を持ち、それを強みに据えています。志望する企業の強みと、あなたの夢を照らし合わせて考えましょう。

最も自然なのは、志望する企業の強みとやりたいことが適合する状態です。あなたにとって、当該企業はオンリーワンの存在と言えます。志望動機に悩むことはないでしょう。

完全に一致しなくても、やりたいことにプラスになる場合や、新たな気づきを得られる場合は、選考を受ける理由を比較的簡単につくれます。

問題は、やりたいことが当該企業の強みとかけ離れているケースです。企業に歩み寄ったところで、志望動機に弱さが露呈します。倍率が高い業界だからこそ、自分のビジョンに適合する企業を慎重に選ぶべきでしょう。

企業研究には、会社ホームページやパンフレット、業界誌の企業インタビューが参考になります。ブログやSNSで発信している情報をチェックするのも良いでしょう。

大切なのは、ネームバリューやブランドイメージにとらわれず、冷静に企業を分析することです。憧れる会社がある場合も、「ファンの贔屓目」を捨て、評論家になったつもりで分析してください。

自己分析で差別化できる強みを見つけ出す

あなた自身が明確なビジョンを持ち就職活動に臨まない限り、企業選びはできません。志願倍率が高い広告業界では、明確なビジョンは最低条件です。ライバルに差をつけるには、他者にはない強みを持ち、それを軸に据えることが大切です。

強みを見つけるには、自己分析を繰り返します。専門的なスキルや資格だけが強みではありません。これまでの経験から得た学びが、あなたの人格を形成する精神的な強みになります。

「課題解決能力がある」「論理的な思考力に優れる」など、学びを書き出しましょう。学びを得たストーリーに説得力があれば、軸に据えられます。アルバイトや部活動・サークル活動、旅行などどんな経験でも構いません。

何も思い浮かばない人は、これまでの人生を振り返り、印象に残ったこと、学びがあったことを挙げてください。そのときの心の動きや解決法には、あなたの「人となり」が現れるはずです。自分の良い部分、悪い部分があぶり出され、強みを見つけやすくなるでしょう。

広告業界の志望動機におすすめの構成

<志望動機の4ステップ>

①広告業界で成し遂げたいビジョンを端的に書く

②広告業界に興味を持ち、この業界を選んだ理由を説明する

③受験する企業を選んだ理由を明確にする

④自分の強みに触れながら、入社後の意志や抱負を示す

志望動機を書くときには、上記の流れを意識すると良いでしょう。②③で選考を受ける企業を強く志望していることに説得力を持たせ、④で強い意志を示します。論理的な流れで採用担当者を納得させる志望動機がつくれます。

①広告業界で成し遂げたいビジョン

まずは広告業界で成し遂げたいビジョンを明確に示しましょう。具体的に何をやりたいか、何を目指すかをはっきり記述します。企業研究の成果を踏まえ、当該企業で達成できる目標を書いてください。

総合職で採用される場合も、具体的な記述を心がけます。広告業界の中で明確にやりたいことがなければ、志望する意志が感じられません。採用後に配属が決定されるとしても、具体的なビジョンは全員に求められます。

②広告業界に興味を持った理由

広告業界に興味を持ち、ビジョンを掲げるに至った理由を具体的に記述します。単なる憧れではないことを証明しなければなりません。採用担当者が納得できるストーリーを書きましょう。

大学での研究内容や従事してきた活動が、広告業界の仕事と直結する場合は記述がしやすいでしょう。そうでない場合は、業界が抱える課題の解決やビジョンの達成に、あなたが貢献できることを考えてください。広告業界の課題を発見し、それを解決するために就職するストーリーがつくれます。業界のニーズを理解し就職を希望するのなら、仕事への強い意気込みを感じられるでしょう。

③競合の中から当該企業を選んだ根拠

あなたのビジョンを実現するために、当該企業が最適であることを示します。企業研究をしっかりと行い、当該企業ならではの特色を見つけ出しましょう。その特色があなたの夢を後押しすることを証明すれば、当該企業を選ぶ大きな理由になります。

企業研究が不十分だと、競合他社との差別ポイントを明確にできません。入社への意志を強く示しても白々しく感じられます。明確な理由がある人に、内定を取られてしまうでしょう。

どの企業も「自社を選ぶ明確な理由」を求めます。「他の会社でも良い」と思われないよう、注意を払い記述しましょう。

④自己の強みと入社後の意志や抱負

最後は入社後の意志や抱負で締めくくります。企業研究をもとに、具体的な業務内容に言及しましょう。内容が具体的であればあるほど、評価が高くなります。社内での目標が明確な人は、強い意志を持って仕事にあたると予想できるからです。企業も安心して採用できます。

意志や抱負を伝える際には、自己の強みにも触れると良いでしょう。たとえば「困難を乗り越え仕事に邁進する」意志を示すとき、「バイトリーダーで、店のさまざまな問題解決にあたった経験があるため、課題解決能力に自信がある」とアピールすれば、説得力が増します。根拠を持ち意志や抱負を述べていると伝わるでしょう。

広告業界の職種別志望動機の例文10選

総合広告代理店の営業職

例文

私はスポーツイベントの認知を高めることで地域に貢献したいと思い、貴社を志望しました。

私は学生サッカーのファンです。しかし、箱根駅伝や甲子園のように一般的には浸透していません。学生らしい溌剌とした動きは、プロに引けを取らない面白さで、プロモーション次第で大衆に支持される存在になると思っています。

このようにまだまだ世に知られていないスポーツを盛り上げることで、学生団体や地域の活性化ができると考えています。

貴社は多くのスポーツに関するプロモーションを手がけており、〇〇大会などの運営にも携わっていることから、貴社でなら自身の目標を達成できると考えました。

私は学生委員会に所属しており、課題を発見し提言する経験を積んできました。入社後はクライアントの課題や要望を叶えられるように尽力するとともに、スポーツプロモーションに関われるよう積極的にイベント運営や企画を提案したいと考えています。(400字以内)

大手総合広告代理店向けの例文です。

総合広告代理店の場合、「規模の大きな仕事がしたい」「世界を股にかけたい」など、抽象的な記述をしがちです。この例文のようにやりたいことを明確にし、しっかりと志望理由を説明できれば、評価は高くなるでしょう。構成も論理的で、最後の決意表明が強く感じられます。

一点注意したいのは、掲げる目標と事業内容とのずれです。この場合、スポーツプロモーションが当該企業でできることを確認しましょう。企業ごとに得意分野は異なるため、企業の特色をしっかり把握した上で作成することが大切です。

総合広告代理店のマーケティング職

例文

地域特性を分析することで、世界中の人に届く広告作成に携わりたいと思い貴社を志望しました。

私は学生時代に世界中を旅しました。価値観や生活様式の多様性に触れることで、自己の世界が広がる喜びを感じられました。

マーケティング職は地域特性を深く分析し、購買行動へつなげる職業です。強く興味を惹かれ、広告業界を志すようになりました。

貴社は海外に多くの拠点を持ち、世界中の広告を手がけています。貴社でさまざまな地域を分析し、地域に即した広告案を提案したいです。

これまでの経験で英語とドイツ語には自信があります。入社したら、マーケティングのノウハウをしっかりと学びます。その上で、地域特性を活かした分析業務を行いたいです。(350字以内)

マーケティングは、具体的な業務内容が想像しにくい職種です。だからこそ、業界研究に基づき、取り組みたい仕事を明確に示すことが重要です。ここでは「さまざまな地域の特性を分析し、購買行動につなげる(広告手法につなげる)」ことを目標に掲げています。具体化の良い例だと言えそうです。

この例文でも、当該企業で目標を完遂できることを確認しなければなりません。海外展開をしていても、現地に子会社を作り、人員も現地で雇っている可能性があります。日本にいながら世界中のマーケティングを手がけられるのか、あるいは出向する形なら就業可能なのか、あらかじめ確認しておきましょう。

総合広告代理店のクリエイティブ職

例文

紙媒体のデザインをベースに、さまざまなメディアに対応する広告を作成するために貴社を志望しました。

現在多くの企業が広告でクロスメディア戦略をとっています。メディアごとに訴求ポイントが異なることに魅力を感じ、デザインの差別化を意識するようになりました。

貴社はメディアごとに手法を分けた広告展開を行っています。ハイボールの魅力を若い世代に伝えた広告展開は見事でした。私も貴社でグラフィックデザインの幅を広げたいです。

学生時代にフリーペーパーのデザインを経験し、紙媒体のデザインは得意です。入社後はWebの特性や訴求ポイントをしっかりと学び、消費者の心に響く広告を作成していきたいです。(300字以内)

総合広告代理店の良さは、多彩な広告手法を学べることです。さまざまなメディアに対応できるデザイナーを目指す姿勢は、総合広告代理店ならではと言えます。当該企業の成功事例を挙げることで、目的とするデザイン像も明確に感じられます。

注意したいのは、クリエイターとしての姿勢がぶれないようにすることです。あくまでもグラフィックデザイナーの範囲内で、できることを広げる意志を示します。「動画も手がけたい」「Webサイトも学びたい」と書いてしまうと、何のプロを目指しているのか分かりません。強い意志が伝わらなくなるので注意しましょう。

専門広告代理店の営業職

例文

Web広告を通して地元企業の魅力を世界中に発信したいと考え、貴社を志望しました。

〇〇市は伝統工芸の焼き物を始め、古くからの産業が息付く地域です。多くの企業が紙媒体を宣伝に利用しているものの、Web広告の認知が進まないのが現状です。

貴社は地元密着を掲げ、〇〇市で広告のデジタル化に取り組んでいます。貴社の姿勢に賛同し、私も営業に参加したいと強く思うようになりました。

私は生まれも育ちも〇〇市です。特に焼き物店に詳しく、顧客の開拓には自信があります。入社後は、対外的なアピールが弱い企業を中心に、効果的なWeb広告をつくれるよう提案したいです。Web広告の効果を広めることで、〇〇市の産業を発展させられればと思います。(350字以内)

専門広告代理店は事業範囲が狭まるため、目標も掲げやすくなります。反面、周りの志願者も似た目標を掲げるため、差別化を図るのは難しいかもしれません。

「地元企業の魅力を発信したい」という目標も、悪く言えば「ありがち」です。だからこそ、明確な根拠が必要です。ここでは市の事業者が直面する課題を発見し、その解決にWeb広告が最適だと説明します。仕事の目的が明確で、当該企業を目指す根拠が十分に伝わります。営業社員として働く姿が想像できるため、採用担当者に良い印象を与えることができるでしょう。

専門広告代理店のマーケティング職

例文

広告代理店ならではの質の高いパーソナライズド広告を提案するため、貴社マーケティング職を志望しました。

パーソナライズド広告は個人で挑戦できるため、広告代理店の介入が弱く感じられます。プロの制作集団だからこそ、分析結果を活かしたより良い提案ができると考えます。

貴社はパーソナライズド広告に関する情報をブログで広く発信しており、分析の活かし方を熟知しています。貴社ならば質の高い広告を提供できると考えました。

現在GoogleAnalytics個人認定資格を取得し、マーケティング職として円滑に就業できるよう努力しています。入社後は分析結果を広告に落とし込む手法を学び、お客様に有効なアドバイスをしていきたいです。(350字以内)

業界の課題を見つけ、自分なりのアプローチを考えていることが窺えます。解決に向けた熱い意志は、マーケッターとしての適性とやる気を感じさせ、良い評価を得られるでしょう。

就職に向けた準備として、資格取得に励む姿勢も高評価です。業務に向けた強い意志を証明する材料になります。

一点注意したいのは、業界の課題を提言するときに上から目線にならないことです。プロ集団であれば、生じる課題に気づかないことはありません。何らかの手を打っていると考えられます。気づいていないことを前提に論を進めないようにしてください。

専門広告代理店のクリエイティブ職

例文

商品の魅力を引き出すデザインを探求し、雑誌向けのファッション広告をつくりたいと思い貴社を志望しました。

良いファッション広告はコンテンツと見紛うくらい、商品の魅力を強く伝えます。さまざまな広告を見ているうち、私も制作者になりたいと思うようになりました。

貴社は鮮烈なコピーで購買意欲を高める広告を多数制作しています。特に〇〇の広告には強く惹かれました。貴社でデザインに携わりたいとの気持ちが、日に日に高まっています。

私はこれまで学祭のポスターや掲示物のデザインを手がけてきました。入社後は、スキルを商用で通用するレベルへ高めたいです。しっかりと技術を身につけた上で、さまざまなブランドのファッション広告を制作したいです。(350字以内)

ファッション関連の広告デザイナーを目指す熱い意志が感じられる例文です。当該企業の広告に強い憧れを持っており、企業を絞り込む必然性も伝わります。一人のファンとして制作物を熟知しているため、入社後も同じ方向を向き仕事ができると期待できます。会社も雇いやすいでしょう。

ただし特徴ある有名企業であれば、ライバルが多いことも認識しなければなりません。差別化を図るには、「当該企業の広告の何が良いのか」「自分だけの強みは何か」を明確に示す必要があります。特に自己の強みは、選考の大きなポイントです。この文章のように短くても構いません。アピールを忘れないようにしましょう。

ハウスエージェンシーの営業職

例文

スーパー〇〇の商品をより多くの人に知ってもらうために、販促物を提案したいと思い、貴社を志望しました。

〇〇は地産地消を目指し、地元産の野菜を大々的に並べるなど仕入れにこだわっています。しかし消費者は安さばかりに着目することが多く、特色が伝わっていないと感じます。魅力を伝える店内POPやパンフレット、フリーペーパーなどが必要です。販促物を提案する営業社員になり、〇〇を盛り上げたいと考えるようになりました。

私はアルバイトで書店の運営に携わり、販促物の大切さを身にしみて実感しています。POPの作成を行ったこともあります。この経験を活かし、貴社に入社できた際には営業社員として、本社に販促企画をどんどん提案したいです。(350字以内)

ハウスエージェンシーは取引先が決まっているため、いかに効果的な提案を行い、グループ全体の売上を上げるかがテーマです。この例文のように、親会社をアピールするために何を提案したいか、どのような効果を期待できるかに焦点を当てると良い志望動機が仕上がります。

ハウスエージェンシーは親会社の規模が大きく、ネームバリューに惹かれる人も少なくありません。そのような中で、親会社のファンになり、経営上の課題を自分なりに発見する姿勢は高く評価されるでしょう。会社を盛り上げるために働く姿が想像できるからです。「ぜひ面接で話してみたい」と思わせる力があります。

ハウスエージェンシーのマーケティング職

例文

〇〇電鉄の広告効果を検証し、△△鉄道に勝てる広告を立案するため貴社を志望しました。

〇〇電鉄はダイヤ改正で空港アクセスが格段に改善されました。△△鉄道よりも短時間で辿り着けることを知らせるポスターは、インパクトがある会心作だったと思います。しかし利用者が思うようにシフトせず、不思議に感じました。私自身が原因を分析し、広告をより効果的にする手法を探りたいと考えました。

私はホームページでWeb解析を行っており、Googleアナリティクスを普段から使用しています。原因分析と改善案の提示には自信があります。貴社入社後は、紙媒体の分析手法を全力で学びます。そして今以上に効果的な広告を提案し、認知度向上に努めたいです。(350字以内)

親会社への熱い想いから会社が抱える課題を見つけ、解決に尽力する意志を示しています。会社が直面する課題を新入社員も共有できるなら、同じ方向を向き仕事ができます。協調性を持ち働ける人材だとみなされるでしょう。

身につけたスキルを提示し、現在できること、入社後に努力することを端的に記述しているのも評価ポイントです。紙媒体の効果を解析するには、企業が保有するノウハウに頼るしかありません。勤務経験のない新卒だからこそ、強い学びの意志を示すことが大切です。

ハウスエージェンシーのクリエイティブ職

例文

〇〇自動車の魅力を伝える映像制作にクリエイターとして参加したく、貴社を志望しました。

貴社の映像広告は車の魅力が十二分に伝わるだけでなく、車への愛情や深いこだわりが感じられます。特に車の誕生ストーリーを追うシリーズ物は、強く記憶に残っています。私も車の魅力をとことん追求し、貴社のように深く表現できるクリエイターになりたいと思い、入社を夢見るようになりました。

私はこれまでYouTube向けの動画を制作してきました。映像制作の基礎は独学で学び、オンライン講座などを活用し、より知識を深めてきました。貴社に入社したら、制作の腕を上げ、ストーリー物の広告など長編にも挑戦したいと思います。同時に車の魅力を深く探求することで、広告の表現を深めていきたいです。(350字以内)

ハウスエージェンシーのクリエイターは、一つの会社に特化できる分、深い表現を追求できます。「より良い物」「より効果的な作品」をつくれる環境にあります。商品の魅力をとことん追求できる点を志望理由に挙げるのは、クリエイターにとって順当です。良い志望動機ではあるものの、多くの志願者が似た内容を書くことも想定しなければなりません。

差別化のポイントは、つくりたいもの、成し遂げたい目標をいかに明確にできるかです。ここでは「長編のストーリー物に挑戦したい」と目標を掲げています。業務で実際に達成し得る内容を挙げると、高評価を得やすいでしょう。

事務職(広告業界全体に適応)

例文

経理の知識を活かし、事務職として広告制作を支えたいと思い貴社を志望しました。

貴社の広告と出会ったのは、愛読している『〇〇』の誌面です。イラストレーターの優れた絵と、詩情豊かなキャッチコピーが、毎回心に残りました。制作しているのが貴社だと分かり、憧れを持つようになりました。私にできることで貴社の運営を支え、素晴らしい広告を作り続けてほしいと考え、事務職での入社を希望するようになりました。

私は大学で経営学を学んでいます。日商簿記2級も取得し、就職準備を進めているところです。貴社に入社できたら、経理を中心に業務にあたりたいです。また広告のスケジュール管理や校正にも携われるようであれば、進んで仕事を覚えます。(350字以内)

事務職はどの業界にも存在します。そのため、「広告業界でなければならない理由」「当該企業を選ぶ理由」が勝負の分かれ道です。いかに説得力のある内容を書けるかが問われます。この例文のように、制作物のファンであることを示すのは、最も効果的な方法だと言えるでしょう。

企業によっては事務職がスケジュール管理や校正などを担うこともあります。「経理しかやらない」「人事しかやらない」と狭めるよりは、求められる仕事に応じる姿勢を示した方が、良い評価を得られます。

未経験だからこそ注意!広告業界の志望動機での留意点

曖昧な夢を語らずやりたいことを具体化する

広告業界の志望動機で特に注意したいのが、ビジョンの具体化です。曖昧な夢を書くと、「かっこいい」「面白そう」といったイメージだけで受験していると思われます。業界研究すらできていない人だと認識されるでしょう。

ありがちなのが、「人の役に立つ広告を作りたい」「広告でWebの世界を変えたい」など、理想を掲げることです。企業のホームページでは、しばしばこのような記述が見受けられます。企業は事業を通して社会を変革する立場です。事業を遂行することで人の役に立つのも、Webの世界を変えるのも、おかしくはありません。

理想を掲げるのは、あくまでも会社です。社員に求められるのは、その理想の実現に何をするかです。具体的な目標を立て、ビジョンを掲げるべきです。

当該企業でしか実現できない強みを明確に

志望先を当該企業に絞った理由を、具体的に説明しているかも確認しましょう。書き上がった志望動機を見直し、「本当に当該企業でなければできないことか」を自問します。他社に流用できそうな志望動機だと感じたら、もう一度検討し直しましょう。

ポイントは、当該企業の強みを明確に掴むことです。企業研究の結果を踏まえ、差別ポイントを書き出しておくと良いでしょう。ホームページやパンフレットで明確に打ち出している特色はもちろん、社風も大きな要素です。社風が自分にぴったりなら、当該企業を選ぶ明確な理由になります。

広告業界を深く知り高倍率に負けない志望動機を作ろう!

人気の広告業界で内定を勝ち取るには、業界研究・企業研究が必須です。曖昧な夢を抱いている人は、広告業界のビジネスモデルや展望を知り、具体的な目標を持つことから始めましょう。目標を持てれば、その実現に適した会社を選べるようになります。ネームバリューではなく、あなたの目的に適った会社を選ぶことが大切です。

目標と会社の強みが一致することで、強い志望動機が仕上がります。高倍率でも恐れることはありません。

人気がある業界だからこそ、しっかりと自分の軸を持つことが大切です。自分を見つめ、強い意志で就活を勝ち抜きましょう。

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